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キジちゃんがその隠しきれないバード愛について語るブログ

【読書感想文】『マチネの終わりに』平野啓一郎 著

アラフォー男子の変態ですどうも( ´_ゝ`)普段は自身のことをおじさんと称しますが今日は…どうか今日だけは男子と呼ばせてください。

さて本日は掲題通り『マチネの終わりに』を読んだ感想文です。

※ネタバレはしません。未読の方もご安心ください。

マチネの終わりに

 

作者について

作者の平野啓一郎さんの作品を私は今までに読んだ事がなく正直どこぞの作家さんが全く知りませんでしたが1999年に『日蝕』で当時最年少の芥川賞作家となり話題になった方だったのですね。

ちなみにメディアへの露出も多めだそうです。他にもいろいろ書いてらっしゃるのでご興味のある方はウィキペディアなどで調べてみて下さい。

 

 

「映画化決定」然もありなん

この本を読む前段階で「映画化決定!」との情報を得ていました。映画の詳細はほぼ知りませんでしたが、本書の冒頭2〜3章を読み終えたぐらいの頃に映画の主演が福山雅治さんと石田ゆり子さんだと知り私はそのキャスティングの妙にものすごく感心してしまいました。

知的かつハイソなアラフォー男女の恋愛を描いた本作ですが、「映画化されるという事実」および「そのキャスティング」が私にはなんだかハマりすぎているように感じられました。どういうことかというと、言ってしまえば私には本書が全体を通して醸す雰囲気がいかにも映画化に耐えるよう(キャスティングも含め)予め設計されたかのようであり、途中の展開もいささかストーリー上都合が良すぎると感じられたのです。更にあけすけに言えば、この作品はあまりにもベタなドラマ的展開をするのです。

 

ドラマティック?ドラスティック!

ドラマ的展開といってもそれは必ずしも否定的な意味ではありません。ドラマティックだからこそこの物語は面白いのであり、故に作品にも引き込まれるというものです。

確かに面白いは面白いのです。でもね、なんだか常に先が読めてしまう展開なのですよ…。この作品は事実に基づいたものあり、実際にモデルとなる二人が実在すると冒頭に書いてありましたが、にも関わらず中盤に訪れるいかにもテレビドラマ的な「偶然の連続」による二人のすれ違いは例えそれが波のない物語に刺激を与える目的だとしてもあまりにも都合が良過ぎると私には思えたのです。仮にそれが創作ではなくマジでそのまま現実にあった出来事だったとしても、それならば尚更もう少し違う描き方があったのではないかなーと感じてしまうのです。

 

前半部が好き

個人的に一番好きな部分は前半部です。二人が互いに自然と惹かれていく描写が素敵です。もうね、ただただ愛なんですよ。身体の奥から自然と湧き上がってくるような、どこまでも深い中年同士の純愛なのです。アラフォーになってもこんな素敵な恋をしてもいいんだ、とか思ってアラフォー男子たる私は年甲斐もなくドキがムネムネしました。(オヤジギャグ)

二人はまさにお互いが一生に一人だけの「運命の人」なのです。私も自身を顧みて過去の恋人の事であったり今の自分の境遇などを色々考えてしまいました。私は運命と言える人に巡り合った事があるのか、あるいはこれから…とか考えてドキがムネム(略)

 

娯楽としての文学

先述の通り物語の収束の仕方がなんとなく読めていたので読後感は「うん、なるほど」みたいなものでした。最後のシーンなんかは福山くんと石田さんが演じたらものすごく絵になるんだろうなー、とか余計な事を想像しながら読んでしまいました。そして「こりゃー映画化すべきだわ」と素直に思いました。

この本は悪く言えば見覚えのある日本製ドラマの為に用意された「周到な脚本」のようであり、良く言えばとても安心して読める「約束された面白本」でもあります。

過去に『舟を編む』を読んだときにも、私はこれと同じような感想を抱きました。最近では『蜜蜂と遠雷』(これは序盤だけしか読んでいませんが)にも同様の感覚を抱きました。これらはいずれも大変売れた良作ですが、しかし個人的にはあまり記憶に残らない作品達です。これらはあくまでも大衆文学であり、一過性の娯楽であり、故に何度も読み返すようなものでもないし、心に残り続ける種類のものでもありません。しかし一方でそれは美点でもあるのです。読書において気負わず気楽に楽しめるというのはとても大切な事だと私は思います。

個人的な欲を言えば途中でもっと精神的にエグい展開があるとか、もしくはあの綺麗な終わり方のその先に訪れるであろうより複雑にならざるを得ない二人のドロドロした関係を描いてくれたりしたらより満足感が高かったかも知れません。もっともそれだと福山・石田で映画化なんて出来ないのでしょうけど。

 

さてラストシーンの後の二人がどうなったかですが…ええ、私にはそれが容易に想像できるんですよ……え?教えて欲しいですか?…う〜ん、もう仕方ないにゃあ。じゃあ教えますね。これは確信を持って言えるのですが、とりあえずこのあと二人は滅茶苦茶セッ(自粛)

 

まとめ

過ぎ去った過去というのは決して固定化されたものではなく、むしろいずれ訪れる未来の選択によって様々な形へとその姿を変える。というのがこの物語の主題です。

いつか得た温かい記憶も、とある未来の決断によって忘れ難い深い悔恨へと置き換わってしまう。しかしその逆もまた真であり、二人は幾分かの遠回りをしましたが、これからそんな不幸な過去を美しい思い出へと変化させていく事でしょう。と、そのように私は想像しています。なぜならばこの先の未来の二人に訪れるであろう、決して避けることのできないある種の「決断」だけが二人の過去の過ちを赦してくれるのだし、二人はその事を数年の歳月をかけて痛みとともに理解してきた訳ですから。

 

美しく、切なく、ニヤニヤしたり、モヤモヤしたり、読者のそんな感情をいい意味で掻き回しながらも相応の終着点に収束していくストーリーには安心感があります。

ここまで私の感想文をお読み頂き、もしかしたら否定的に思われた方もいらっしゃるかも知れませんが決してそんな事はありません。普通に面白いですし読んでも絶対に損はしないです。

 

本作が少しでも気になっている方はとりあえず読んでおいた方がいいですよ。中年でも素敵な恋がしたくなる、そんな良作でした(・∀・)

マチネの終わりに

マチネの終わりに